出逢うは別れのはじめとか…。人生には様々な出会いと別れがある。その中には楽しい思い出も悲しき思い出も数多あるが、美しき女性との儚き思い出ほど忘れられぬものはないだろう。彼女と出会ったのはちょうど一年前。自分の部下から紹介されたのが最初のきっかけだった。次第に親しい付き合いになり、そして…男と女の関係になった。最初は火遊びのつもりだったのだろう。私の部下の女遊びで傷心の彼女を慰めるだけのつもりだったのだが…。気付いた時には二人とも愛欲の沼の奥底まで落ちてしまっていた。「弘さんとは別れたの。」そう告げられてから二ヶ月間、私達は本物の恋人同士のように旅行やバカンスを楽しんできた。その間の彼女の様子はまるで私に家庭があることを気にもとめなかった様子であったが…。つい三日前、彼女から深夜に連絡があった。「私、弘さんと結婚します。ごめんなさい…。」彼女は賢い選択をしたのだ。未来のない私の関係を続けることに疲れ果てたのかもしれなかった。「わかった、おめでとう。」そう言葉を返したのは私の本心だった。束の間の夢のひととき、今夜が二人にとって最後の夜となるのだ。
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